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2012年1月19日(木)朝日新聞 朝刊
ひととき

手彫りの年賀状
山口市 関ヨシミ 主婦 77歳


 今年も手彫りのゴム版画の年賀状にしました。ゴムの板に彫刻刀で原画を彫り、バレンでこすって刷る、もっともシンプルな方法です。
 結婚翌年の1961年、東京から夜行列車に揺られ夫の任地・山口へ。最初のゴム版画年賀状の図柄は、大きなダイコンを持った夫と私の姿でした。その後、息子や娘が加わっていきます。
 親が亡くなったため途中で2年分を欠いていますが、ゴム版の数は今年の分でちょうど50枚になりました。一枚一枚見返していると、わが家の半世紀の記録のように思えます。
 この5、6年は毎年、明るい笑顔の女の子を彫ってきましたが、今年は東日本大震災が起きたあとだけに、女の子の表情を笑顔にすることができませんでした。文字をたくさん彫り込んだのも珍しいことです。
 口元を「へ」の字にして悲しげで不安そうな表情を浮かべた女の子に向かって、竜の子がやさしい顔で勇気づけています。「ことしは、明るい年だよ ぼくの力で きっと げんきでね」
 51枚目はふたたび、女の子が笑顔を取り戻していることを願ってやみません。

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