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1978年6月9日(金) 朝日新聞

ぬか袋こそ節水洗剤 小郡町の主婦グループ
1/3ですみ、公害ゼロ 行政頼りから自衛策へ

 
  福岡市などの深刻な渇水を貴重な教訓として吉敷郡小郡町の主婦グループが、食器洗いに大量の水がいる洗剤をやめ、3分の1の水ですむぬか袋を使う運動に立ち上がった。主婦たちは「節水だけでなく、洗剤公害追放、手も荒れないと一石三鳥。生活自衛は行政だけに頼らず、私たちの手で」と呼びかけに懸命だ。
  このグループは同町尾崎団地、主婦関ヨシミさん(43)ら小郡杉の子生活学校の主婦8人。関さんらは、福岡市の水不足を伝えるニュースをきっかけに、5月下旬ごろから「わたしたちの町は大丈夫か」と水道行政の現状を丹念に調べた。
  小郡町(給水人口1万7千人)は水源をすべて尾崎団地そばを流れる四十八瀬川と椹野川の伏流水(地下水)に頼っている。川の水位が約20pも下がり、給水制限寸前。さらに尾崎団地など約200戸には下水道がなく、生活汚水が直接川に流れ込む。極端に流量が減った川にこれまで通りの生活汚水が流入し、川は洗剤のあわなどですっかり汚れていることがわかった。
  ちょうどそのころ、消費者問題の雑誌に「ぬか袋で食器を洗うと洗剤に負けないほど汚れが落ちる」の記事が載った。関さんらはさっそく試したが、たしかに効果があるうえ、それまで使っていた洗剤よりもはるかに少ない水で食器洗いができた。
  「これだ」と思った主婦たちは、さらしとぬかの材料を購入、長さ15pほどのさらしの袋にぬかをつめただけで簡単にできる“節水洗剤”作りに大わらわ。材料費はさらしとぬかを合わせ1個わずか12円前後と格安。害もない。「もし私たちが福岡市のような目にあったらと思うと何かせずにはおれません」と関さん。
  町当局は、節水を呼びかけるチラシを印刷、10日ごろからようやく本格的な節水策に乗り出す。岡真喜夫 町水道課長は「主婦グループに負けないよう真剣に考える」と話している。

 
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1980年4月10日(木) 読売新聞

おはよう
労働省募集の婦人活動に入選した「杉の子生活学校」代表
関 ヨシミさん(45)

 
  グループの誕生はS.51年8月で、構成員は現7人。
「S.45年ごろ、食品添加物の活性剤に発ガン性物質が含まれていると聞き、アイスクリーム、マーガリンから練り歯みがきまで、わが家から追放しました。ひところは食塩で歯をみがいたほどです。ところが子供が小学校に入学したら、学校給食で洗剤に頼っての食物、食器洗い。自分の家だけが、使わなければよいという考え方ではだめだとわかりました」
  合成洗剤追放運動を続けていた現在の仲間と知り合い、グループを結成。2600食をつくる町立給食センターとかけ合い、それまで合成洗剤は「県の指導で大丈夫」と相手にしなかったセンターに「せっけんを使ってみよう」と言わせた。
  S.52年には、過剰包装と問題になっていたスーパーなどの発ぽうスチロール製さらを追放する運動も部分的にだが成功させた。現在1世帯がゴミ出し日ごとに1袋減らせば、収集車1台と作業員3人がいらなくなると、ゴミの見直し運動中。漫画入りの会報を全戸に配布するほか、会員が手製のヌカ袋を携帯して、会った人にヌカによる食器洗いを勧めるなどごく日常的な活動。「隣人同士が声をかけ合っていけば、活動の輪は自然に広がります」と無理はしない。山口大教官の夫との間に一男一女。
 
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1980年4月10日(木) 毎日新聞

プロフィル
婦人活動事例募集で労働相表彰を受ける
関 ヨシミさん(45)

 
   「婦人の10年」の中間年に当たり、労働省が募集した活動事例報告に応募、679編の中から44編が選ばれ、関さんら7人の主婦の「杉の子生活学校」の活動報告もその中に。
  「杉の子」はS.51年に発足、添加物の追放、ノーパック運動、合成洗剤追放などに取り組んできた。町のゴミ収集車に同乗、食物、衣料品などまだまだ使えるものがどんなに大量に捨てられているか、身をもって知った。これをきっかけにスーパーや大手商店と交渉、サツマイモやゴボウなどのノーパックを実現した。
  「小郡町5000戸が週に1つのゴミ袋を出さないよう倹約したらトラック1台と3人の収集係が不要になるのよ。主婦が身の周りをもういっぺん見直すだけで大変な省エネ省資源活動なんです」
  今年2月、4年ごしの運動が実り、町が給食センターでの合成洗剤の使用をやめた。いま、サラシで作ったぬか袋をいつも持ってPRしている。「油で汚れた食器だってきれいになりますとも」―。山口大教授の奥さんだが、きさくな人だ。