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2011年5月12日(木) 讀賣新聞 朝刊山口版

源氏物語 16年かけ読破
山口の70歳代女性5人
「今も昔も女心は変わらない」

紫式部の長編小説「源氏物語」を原文で音読しようと集まった山口市の70歳代の女性5人が10日、16年かけて全54帖を読み終えた。これまでに読んだテキストは全8冊、計約2400ページ。メンバーは「平安時代の暮らしぶりや風習を堪能できた」「女心は今も1000年前も変わらない」などと感想を語り、達成感にひたっていた。

読破したのは「源氏物語を読む会」。山口市の公民館(現嘉川地域交流センター)の読書クラブに集まった主婦らから「古文、どうせなら源氏物語に挑戦したい」と声が挙がったのをきっかけに、1995年5月に開講された。
源氏物語を大学の卒業論文のテーマにした関ヨシミさん(76)を講師に迎え、原文と注釈が書かれたテキストを手に、1人が原文を音読し、隣の人が現代語に訳した。こうしたやり方で、毎月第2火曜日の午前9時半から2時間、音読を続けてきた。
開講時に40人近くいたメンバーは、高齢による病気などで次第に減って、3年ほど前に現在の5人になった。

目標を達成した10日は、光源氏の息子薫が、思いを寄せる浮舟に会おうと試みる最後の場面。尼になっていた浮舟は薫の接触を断った。関さんが「薫は女性の変化を読み取れていない」と解説すると、メンバーが「浮舟も薫と一緒になれば幸せになれたかもしれないのに」などと感想を言い合った。
全編を読み終えると、「ここまで来るのに長いことかかったね」と互いにねぎらった。西村紀代子さん(70)は「昔は今のように自由に恋愛できなかったが、男性に浮気されたり、好きな人と別れたりすることがつらい女心に変わりはなかった」と振り返った。
メンバーは「次は紫式部日記を読んでみたい」と新たな挑戦に意欲を見せている。

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2011年5月8日(日) 毎日新聞 朝刊山口版

16年かけ源氏物語を読破
奥深さに触れる
山口の70歳代主婦5人 原文の音読続け


紫式部の長編小説「源氏物語」を原文で全編読もうと集まった70〜76歳の5人の主婦が10日にも、目標を達成する。読み始めてから16年。月1回、ほぼ休みなく開かれた講座に参加してきた5人は「続けたおかげで、物語の奥深さに触れることができた」と喜んでいる。

山口市嘉川地区の主婦らで作る「源氏物語を読む会」。95年5月の開講以来、毎月第2火曜日の午前9時半から2時間、嘉川公民館の講座室で原文の音読を続けてきた。
母体は、公民館が開設した「読書クラブ」。メンバーの主婦らが、「誰かが訳した本でなく、原文で源氏物語を読んで、自分なりの解釈をしてみたい」と提案。古典文学に造詣のある関ヨシミさん(76)=山口市吉田=を講師に招いた。

源氏物語は54帖(編)からなる長編。テキストに使う「新潮日本古典集成 源氏物語」も計8巻、1巻当たり約300ページに及ぶ。
生徒は持ち回りで、原文と脚注を1〜2ページずつ音読し、関さんが語句の意味や文章の解釈を説明する。慣れない文語文、難解な語句に、「当初はみんな、一行読むのも四苦八苦だった」(関さん)という。
開講時、40人近くいたメンバーは、高齢による死亡や病弱などで一人、また一人と減っていき、5年ほど前、今の5人を残すのみに。病気などで3人しか出席できないこともあったが、大雨などで関さんが車で来られない時を除き、講座は休まず続いた。出席できなかった生徒は、自宅で音読して講座についていった。
伊藤富美子さん(73)は「音読するには、文章や言葉の解釈を予習しておかないといけないが、忙しくてできないこともあった。でも、先生は怒らずに見守ってくれた。それで続けられた」と話す。

10日の最終講座で、残る十数ページを読み終える。終了後、5人は、関さんを囲んでささやかな食事会を計画している。
生徒たちは「16年続けたおかげで音読にも慣れ、平安貴族の生活や風習も分かるようになった。源氏物語が生まれた時代背景を知るために、次は『紫式部日記』を読んでみたい」と意気込んでいる。

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2011年5月7日(土) 朝日新聞 夕刊西日本版

源氏物語 読み続け16年
千年変わらぬ女心に共感
山口の6人 音読の会


初めて集まった日から16年。ようやく全54帖を読み終えようとしている。山口市の「源氏物語を読む会」。毎月第2火曜日に、70代の6人の女性が嘉川公民館に集まり、2時間かけて原文と訳文を音読してきた。10日、最終回を迎える。
4月12日も、静かに音読が進められていた。原文と注釈が書かれたテキストを手に、1人が原文を読み、隣の人が現代語に訳して読んでリレーしていく。これまで読んだのは全8冊、計約2400ページに及ぶ。
主人公の光源氏の息子・薫が、思いを寄せる浮舟という女性が尼になったと聞いて、何とか会おうとする場面。「お金がないと尼にもなれなかったの」。講師の関ヨシミさん(76)が当時の風習を説明した。

会が始まったのは1995年5月。きっかけは「公民館の古い図書を整理して欲しい」という呼びかけだった。集まった女性たちが本を手にするうちに読書会の形に。何冊か読むと「古文にも挑戦してみたい」「それならば源氏物語を」という話になった。夫が源氏物語の研究をし、自身も源氏物語を卒論のテーマにした関さんに講師を頼んだ。
伊藤富美子さん(73)は「男性の擁護の元にいて、なよなよして頼りない女性がだんだん自分の心を強く持つようになる。その成長を応援したくて、続きが気になった」と話す。
当時の生活は、今の自分たちとは全く異なる。だが、男性に浮気されては傷つき、老いては不安に駆られるという心理は今に通じるものがある。山田令子さん(70)はそんな現代とのギャップと共通点にひかれ、読み続けた。「千年経っても、人の気持ちは同じなんだなあと。きっと、式部が本当にあったことを書いているんだと思う。そのぐらいリアル」
次回ですべてを読み終える。「次は紫式部日記を読んでみようか」。メンバーからは、そんな話も出始めている。