こっちゃんのエッセイ

- 2007年6月のエッセイ -
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2007年6月22日(金)

[エッセイ#79]あんず

梅雨に入ってもあまり雨は降りません。
朝顔の鉢も花壇もカラカラです。
雨水を溜めている瓶も水が少なくなっています。
こっちゃんは柄杓(ひしゃく)で少しずつ鉢に水をやりました。
今、花壇には「くろたねそう」が盛りです。
もう矢車草は終わりになりました。
この「くろたねそう」ももうすぐ果実になります。
風船のような実で中に黒い種が入っているのです。
「おかあさん、雨降らないね。あたしね、長靴履いて傘持ってるのよ」
なるほど、こっちゃんは雨降りの格好です。
「だってね、おねえちゃんがね、『梅雨になったから雨が降る』って教えてくれたの。『蛙さんだってゲロゲロ鳴くのは雨だ雨だって喜んでいるのよ』って教えてくれたの」
どうもお空を見上げても雨雲はありません。

「こっちゃん、傘は置いて篭持って裏に行きましょ」
おかあさんとこっちゃんは篭を持って裏に回りました。あんずの木の下にです。このあんずの木はもう15年くらい経って、幹の直径が30儷瓩あり、見上げる程の大きさです。そこに今年はたくさん実がつきました。「あんず色」と言われているように本当に綺麗な色です。
「おかあさん、落ちているのを拾うね」
「そうね、昨日の夜風が吹いたから…」
二人はたくさん拾いました。
「ねえ、おかあさん、食べてもいい ?」
一休みです。草の上に座っておやつにしました。今年はお天気続きだったため甘味が強いようです。
「ほら、こうするとパカッと二つに割れるでしょ。この種見てごらんなさい。この種はね、昔から咳止めの薬にするのよ」
「ふうん。でも種よりやっぱり実の方がおいしいね。あたし、これで3つ食べたのよ」
「こっちゃん、何3つ食べたの ?」
あっ、おねえさんです。おねえさんも長靴を履いて出てきました。
「おねえちゃん、あんずよ。ほら篭いっぱい」
「わあ、すごい、すごい収穫。どれどれ、ご馳走になりましょ」
おねえさんも一休みです。今まで部屋の大掃除をしていたのです。なにしろ漫画家でしょ。下描きの紙だけですぐ足の踏み場もなくなります。
「二人ともお腹痛くしないようにね。でもね、まさか10個も20個も食べられないわね」
おかあさんは笑いながら二人の食べっぷりを見ています。そうして自分の小さい時のことを思い出していました。庭にあった大きな柿の木のこと、まだまだ青い実のうち、「ただいま」も言う前に門を潜るとまず一個もいで食べてから玄関をガラガラ、という生活。新潟の疎開先では畑のスイカを実らないうち食べてしまった事、とにかく「果物だけが命」なんていうセリフが似合う自分の果物に対する執念。その為庭中果物の木を植えている始末。

「ねえ、おかあさん、こんなに沢山どうしよう」
さすがおねえさんです。どんなに食べても4つが限度、あんずはまだまだ木についています。毎日毎日篭いっぱい穫ってどうするのか心配になってきました。
「そんなこと心配ご無用。さあ、これから働きますよ。二人とも立って立って」
それから三人は傷のあるもの、まだ固いもの、熟し過ぎているもの、とそのまま食べられるもの、とに分けていきました。なかなか大変な仕事です。「あんず」はジャムを作ってもジュースを作っても、お酒に漬けてもおいしいのです。
台所は戦争状態になりました。大きな瓶も消毒しました。寸胴の鍋も登場です。雑木の蜂蜜も出番です。
「おかあさん、いつになったらジュースが飲めるの ?」
「そうね、梅雨が明けた頃かしら」
待ち遠しいことです。

2007年6月8日(金)

[エッセイ#78]ノイチゴ

いつもの通りのいつもの朝です。
こっちゃんのお話はこれまたいつもの通りお外の話です。
ちょっと違うのは、小さな篭の中にはお花じゃなくて苺が入っています。
ワイルドストロベリー即ち野苺です。
畑の中には自分勝手に増えた野苺が真っ赤な小さな実をつけ朝日にキラキラ輝いています。
こっちゃんの毎朝の仕事はこの苺を摘むことです。
直径1僂砲睨たない実が葉の下に隠れているのを探すのは小さなこっちゃんの手でしか出来ません。
もっとも蛙さんが嫌いだったら駄目です。葉っぱの下からぴょんぴょん飛び出すのですから。蛙さんだけではありません。この時期ミミズも、くもも、なめくじも、ダンゴムシも何でもいます。みんなこっちゃんのお友達です。
「こっちゃん、苺どの位採れたの ?」
お家の中からおねえさんの声です。おねえさんはこの苺を、ヨーグルトの中に入れたり、パンの発酵に使ったりします。今もお昼に焼くパンを捏ねている所です。
「おねえちゃん、たくさんとれたよ。30かな、100かな」
こっちゃんの数は20位しかありません。それより多いとみんな30や100になります。烏骨鶏は13まで数えられるそうですが…
「おねえちゃん、ちょっと来てみて」
「なによ、今忙しいのに」
そんな事いいながらもおねえさんは裏口から長靴を履いて出て行きました。
「ねえおねえちゃん、この苺の葉っぱと、この葉っぱと同じみたいだよ」
こっちゃんの手には「みつ葉」の葉が握られています。なるほどよく似ています。
「そういえば、ほら、こっちゃん、この葉はどう ? 同じみたいでしょ」
おねえさんの手には「げんのうしょうこう」の葉があります。
「ほんとだ、同じだ」
ここ畑の一角は春一番にみつ葉を収穫し、その後げんのしょうこうの葉を摘み取っていた日当たりのいい場所です。そこへいつの間にか野苺が入り込んで実をつけていたのです。「おかあさん、知ってた ?」
今度はおかあさんまで招集です。
「あら、何を ?」
おかあさんも包丁の手を止めて出てきました。
「こんな所に苺がいっぱい。こっちゃんが見付けたの」
「あら、ほんと。こんなにみつ葉やげんのしょうこうがあるのに… 仲良しなのかしらね」
「おかあさん、仲良しなんだよ。けんかしないもん。みんな大きく育ってるもん。」
こっちゃんは大得意。おねえさんは側にあるクローバーを眺めています。
「おかあさん、来年はこのクローバーが強くて入り込むかしらね」
「さあ、来年になってみないとね」
植物にはまだまだ解らない事がたくさんあるのでしょう。お昼ご飯は苺の匂いのするパンと、ヨーグルトです。勿論キャベツも食べました。おなかいっぱいになり、こっちゃんはお昼寝の時間です。

今日もいい天気です。お布団がよく乾きます。でも何だか霞がかかってきたようです。西側の山がぼんやりとしか見えません。風が出てきました。
「おかあさん、黄砂じゃない ?」
おねえさんが3階から降りてきました。
「光化学スモッグかもね」
二人は大急ぎで洗濯物もお布団も取り込みました。干してあった薬草も避難です。
今年になってこんな状態が続きます。お隣の国からとはいえ、もっと注意してくれないかしらとつくづく思います。外に干せないから乾燥機を使う、そうしたらCO2が増える、まるで「いたちごっこ」のようです。「いたち」といえば、いたちが鶏小屋に入り、大騒ぎした事の話はこの次にしましょう。